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クローン病の症状・診断・治療をガイドラインに沿って解説

クローン病は10代後半~20代に多くみられます。
それではクローン病とはどのような病気なのでしょうか?
本記事では、クローン病の定義、原因、症状、診断、分類、治療、食事、寿命について解説します。
これを読めば、クローン病の概略が分かります。
クローン病の検査・治療をする際に役立ててみてください。

クローン病とは

小腸および大腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をおこす原因不明の疾患です。
類似した疾患として潰瘍性大腸炎があり、2つを合わせて「炎症性腸疾患」と呼びます。(注1
この病気は10代後半~20代に多くみられます。
病変は口から肛門にいたる全ての消化管におこりますが、小腸と大腸が好発部位です。
消化管以外に貧血・関節炎・虹彩炎などの合併症がみられることがあります。(注2

クローン病と潰瘍性大腸炎の違い

クローン病は口から肛門にいたるまでの全ての消化管におこります。
それに対し、潰瘍性大腸炎は主に大腸におこるのが相違点です。
またクローン病の病変は、炎症が粘膜の深部に及びます。
潰瘍性大腸炎の病変は、浅い粘膜のびらん・炎症です。(注2

クローン病の原因

原因ははっきりと証明されていません。
何らかの遺伝的な素因が背景にあり、食事や腸内細菌に対して、腸内に存在する免疫細胞が過剰に反応しておこるという仮説が有力です。(注1

クローン病の症状

主な症状は、腹痛・下痢・体重減少・発熱です。
ときに嘔吐・大出血がみられます。
腹部症状がなく、不明熱・関節痛などで発症することもあります。(注2

クローン病の診断・検査

若年者に慢性的に続く腹痛、下痢、発熱、体重減少といった症状からクローン病を疑い、以下のような検査をします。(注2

  • 上部消化管内視鏡検査
  • 大腸内視鏡検査
  • 大腸X線造影検査
  • 小腸X線造影検査
  • バルーン小腸内視鏡検査
  • カプセル内視鏡検査
  • CT・MRI

診断の基準

検査において、次のような所見がみられた場合、クローン病と診断します。

1. 主要所見
  • A. 縦走潰瘍:腸の縦軸方向にできた縦長の潰瘍
  • B. 敷石像:潰瘍によって囲まれた粘膜がもり上がり、丸い石を敷き詰めたように見える状態
  • C. 非乾酪性類上皮細胞肉芽種:病変の生検で診断
2. 副所見
  • a. 2つ以上の消化管に認める不正形~類円形潰瘍またはアフタ
  • b. 裂孔・痔瘻・肛門周囲膿瘍などの肛門病変
  • c. 特徴的な胃・十二指腸病変:竹の節状外観、ノッチ様陥凹
3. 確定診断の条件
  • 主要所見のAまたはBを認めるもの
  • 主要所見のCと副所見のaまたはbを認めるもの
  • 副所見のa, b, cすべてを認めるもの

クローン病の分類

活動性・病型・病態・重症度によって分類されます。

活動性分類

  • 活動期:病気の勢いが強く、明らかな症状がみられる時期
  • 寛解期:病気が落ち着いており、症状が少ない時期

病型分類

  • L1:小腸型
  • L2:大腸型
  • L3:小腸大腸型
  • L4:上部病変
  • 特殊型(注2

病態分類

  • B1:合併症のない非狭窄非穿通型
  • B2:狭窄型
  • B3:穿通型(注2

重症度分類

  CDAI 合併症 炎症(CRP) 治療反応
軽症 150-220 なし わずかな上昇  
中等症 220-450 明らかな腸閉塞などなし 明らかな上昇 軽症治療に反応しない
重症 450< 腸閉塞、膿瘍など 高度上昇 治療反応不良

CDAI(Crohn’s disease activity index):現在の重症度を表す指標で、過去7日間の症状などから算出(注2

クローン病の治療

残念ながらクローン病を完治させる治療法はありません。
クローン病は寛解・再燃をくり返し、腸管の狭窄・瘻孔・膿瘍などの腸管合併症を起こしやすいのが特徴です。
そして腸管切除が必要となる場合が多くみられます。
そのため疾患活動性のコントロール、腸管切除の回避、QOLの改善を治療の目標とします。(注2

クローン病の治療指針

病状・活動性により治療法を選択します。(注2

活動期(軽症~中等症)
  • 薬物療法:ブデソニド、5-ASA製剤(ペンタサ・サラゾピリン)
  • 経腸栄養療法:成分栄養剤(エレンタール)、消化態栄養剤(ツインライン)
活動期(中等度~重症)
  • 薬物療法:経口ステロイド(プレドニゾロン)、抗菌薬(メトロニダゾール・シプロフロキサシンなど)
  • 経腸栄養療法:成分栄養剤(エレンタール)、消化態栄養剤(ツインライン)
  • 血球成分除去療法(顆粒球吸着療法)の併用:アダカラム
活動期(重症)
  • 薬物療法:ステロイド経口または静注、インフリキシマブ・アダリムマブ・ウステキヌマブ・ベドリズマブ・リサンキズマブ・ウパダシチニブ
  • 栄養療法:絶食のうえで完全静脈栄養療法
寛解期
  • 薬物療法:5-ASA製剤、アザチオプリン、6-MP、インフリキシマブ・アダリムマブ・ウステキヌマブ・ベドリズマブ・リサンキズマブ・ウパダシチニブ
  • 在宅経腸栄養療法:エレンタール・ツインライン

外科的治療

内科的治療で対応できない場合は外科的治療を行います。(注2

絶対的手術適応

穿孔、大量出血、内科治療で改善しない腸閉塞、膿瘍、小腸がん、大腸肛門管がん

相対的手術適応

難治性腸管狭窄、内瘻、小児の栄養障害、狭窄や瘻孔を伴わない活動性腸管病変、難治性肛門病変

小腸病変の手術

病変部の小範囲切除術、狭窄形成術

大腸病変の手術

病変部の小範囲切除術、病変が広範な場合は大腸(亜)全摘術

胃十二指腸病変の手術

内視鏡的拡張術が無効な十二指腸の狭窄に対して胃空腸吻合または狭窄形成術

肛門病変の手術

経肛門的拡張術など

クローン病の食事について

食事について気をつけることは、活動期と寛解期で異なります。(注3

活動期(軽症~中等症)

  • 栄養素を過不足なくとる
  • 下痢を起こしやすい食品(脂質の多いもの、乳製品、香辛料)を控える
  • 水分、電解質を補給
  • 狭窄がある場合は食物繊維を控える
  • 経腸栄養療法を行うことあり

活動期(重症)

  • 経腸栄養療法
  • 絶食で完全静脈栄養療法

寛解期

普通の食事で大丈夫です。

クローン病の寿命

いわゆる寿命はケースバイケースであり、一概には言えません。
代わりの指標となる「診断後10年の生存率」は96.9%と生命予後は良好です。(注1

まとめ

クローン病は小腸および大腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をおこす原因不明の疾患です。
主な症状は、腹痛・下痢・体重減少・発熱です。
内視鏡検査、大腸・小腸造影検査、CT、MRIなどの検査で診断します。
活動性・病型・病態・重症度によって分類されます。
5-ASA製剤などの薬物療法、経腸栄養療法、手術療法で治療します。
寛解・再燃をくり返し、長期にわたる治療が必要です。
診断後10年の生存率は96.9%と生命予後は良好です。

参考資料

  1. クローン病(指定難病96)|難病情報センター
  2. 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針|IBD研究班 - PDF
  3. 食生活で注意することは? | 食生活での注意点を知る | クローン病|IBD LIFE
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