メニュー

潰瘍性大腸炎の症状・原因をガイドラインに沿って解説

潰瘍性大腸炎は比較的若い人にみられる疾患です。
潰瘍性大腸炎とはどのような病気なのでしょうか?
本記事では、潰瘍性大腸炎の定義、症状、原因、診断、分類、治療、食事について解説します。
これを読めば潰瘍性大腸炎の概要が分かります。
潰瘍性大腸炎の検査・治療中の方は役立ててみてください。

1.潰瘍性大腸炎とは

主として大腸の粘膜に、びらん・潰瘍を形成する原因不明の炎症性疾患です。
病変は直腸から上行性に(口側に向かって)広がります。(注1
30歳以下の成人に多く、全国の人口10万人あたり100人程度みられます。(注2

1-1.クローン病との鑑別

類似した疾患にクローン病がありますが、相違点は以下のとおりです。
潰瘍性大腸炎は主に大腸におこりますが、クローン病は口から肛門にいたるまでの全ての消化管におこります。
また潰瘍性大腸炎の病変は、浅い粘膜のびらん・炎症ですが、クローン病は、炎症が粘膜の深部に及びます。(注1

2.潰瘍性大腸炎の症状

持続的に繰り返す粘血便・血性下痢と腹痛が症状です。
排便の回数は重症度が増すごとに多くなり、1日に15回以上になることもあります。
また発熱がみられることもあります。
大腸全体をおかす場合には悪性化(がん化)する傾向がみられます。(注1

3.潰瘍性大腸炎の原因

原因は不明ですが、免疫病理学的機序・心理的要因が関与すると考えられています。(注1

3-1.ストレスは症状を悪化させる?

ストレスで腹痛や下痢を起こすことは否定できません。
ストレスはあらゆる病気で症状を悪化させます。(注2

4.潰瘍性大腸炎の診断

持続的に繰り返す粘血便・血性下痢といった症状、放射線照射歴・抗菌薬服用歴・海外渡航歴の除外などから潰瘍性大腸炎を疑い、以下のような検査を進めます。(注1

4-1.大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

特徴的な所見として、粘膜がびまん性におかされ、透けてみえるはずの血管がみえなくなり、粗いもしくは細顆粒状の粘膜面がみえます。
粘膜はもろくて触れると出血しやすく、血膿性の分泌物が付着しています。
もしくは多発性のびらん、潰瘍、偽ポリポーシスといった所見がみられます。
病変が直腸から連続して認められるのが特徴です。(注1

4-2.注腸X線検査

粘膜がびまん性におかされ、粗いもしくは細顆粒状の粘膜面がみられます。
もしくは多発性のびらん、潰瘍あるいは偽ポリポーシスがみられます。
ハウストラ(大腸のひだ)の消失、腸管の狭小・短縮がみられることもあります。(注1

4-3.小腸X線検査

造影剤(バリウム)を口から飲むか、鼻からチューブを挿入して小腸の入り口まで進めて造影剤を注入するかして、小腸を造影検査します。
潰瘍性大腸炎の病変が小腸まで及んでいないかを調べる検査です。

4-4.カプセル内視鏡

カプセルの形をした内視鏡を飲んで検査する方法です。
カプセル内視鏡がおなかの中で写真を撮り、無線でデータを送信します。
撮影される画像は、約8時間で約5万枚です。
撮影された画像を、専用ソフトウエアを用いて解析します。
これにより、小腸の病変の有無が検査できます。(注3

5.潰瘍性大腸炎の病型・病期・重症度

潰瘍性大腸炎は、病型(病変の広がり)、病期、重症度によって分類されます。

5-1.病型

  • 全大腸炎:大腸全体に及ぶもの
  • 左側大腸炎:大腸の左半分に及ぶもの
  • 直腸炎:直腸に限局したもの
  • 右側あるいは区域性大腸炎:大腸の右半分または大腸の一部に及ぶもの(注1

5-2.病期

  • 活動期:病変が活動期にあり、明らかな症状がみられる時期
  • 寛解期:病変が落ち着いており、症状が軽い時期(注1

5-3.重症度

  • 軽症:排便回数が4回/日以下、血便は少なく、発熱なし
  • 中等症:軽症と重症の中間
  • 重症:排便回数が6回/日以上、血便が多く、発熱あり
  • 劇症:15回/日以上の血性下痢、38℃以上の発熱、強い腹痛がみられる(注1

6.潰瘍性大腸炎の治療

潰瘍性大腸炎の治療法について解説します。

6-1.潰瘍性大腸炎は治るのですか?

残念ながら完全に治してしまう治療法はありませんが、治療が奏功し「寛解」という状態になれば日常生活は何不自由なくおくることができます。
ただし大腸粘膜の炎症を抑え、症状をコントロールする治療薬は存在します。
再発する場合が多く、症状を抑えるために継続的な治療が必要です。(注2

6-2.治療薬

重症度・病変の範囲に応じて以下のように選択します。

  軽症 中等症 重症 劇症
左側大腸炎型全大腸炎型 経口剤:5-ASA、プデソニド腸溶性徐放錠
注腸剤:5-ASA、ステロイド注腸
フォーム剤:プデソニド注腸フォーム剤
ステロイド大量静注療法 ステロイド大量静注療法
タクロリムスシクロスポリンインフリキシマブ
緊急手術の適応を検討
  ステロイド経口カロテグラストメチル
直腸炎型 経口剤:5-ASA製剤
坐剤:5-ASA坐剤、ステロイド坐剤
注腸剤:5-ASA注腸、ステロイド注腸
フォーム剤:ブデソニド注腸フォーム剤

この他、難治例の治療薬、寛解維持療法の薬がありますが、内容が難しすぎるため省略します。
詳しくは参考資料1をご覧ください。

6-3.手術療法

大腸穿孔、大量出血、強力な内科治療が無効、小児の成長障害の場合などで手術療法が検討されます。
5種類の術式がありますが、1. 2. が標準的な方法です。

  1. 大腸全摘、回腸嚢肛門吻合術
  2. 大腸全摘、回腸嚢肛門管吻合術
  3. 大腸全摘、永久回腸人工肛門増設術
  4. 結腸全摘、回腸直腸吻合術
  5. 結腸亜全摘、回腸人工肛門増設術、S状結腸粘液瘻またはHartmann手術(注1

7.潰瘍性大腸炎の食事について

潰瘍性大腸炎の方が、食事で気をつけるポイントを示します。

  • バランスのとれた食事
  • 1日3食しっかり食べる
  • 暴飲暴食をさける
  • 加熱したものを食べる
  • 炭水化物を十分にとる
  • 脂肪を控える
  • 刺激の強い食品を控える
  • アルコール・炭酸・カフェインを含む飲みものを控える
  • 食物繊維の多い食品を控える
  • 過去におなかの調子が悪くなった食品をさける(注4

8.まとめ

潰瘍性大腸炎とは、主として大腸の粘膜に、びらん・潰瘍を形成する原因不明の炎症性疾患です。
持続的に繰り返す粘血便・血性下痢と腹痛が症状です。
原因は不明ですが、免疫病理学的機序・心理的要因が関与すると考えられています。
大腸内視鏡検査・注腸X線検査などにより診断します。
潰瘍性大腸炎は、病型(病変の広がり)、病期、重症度によって分類されます。
大腸粘膜の炎症を抑え、症状をコントロールする薬で治療します。
脂肪や刺激の強い食品を控えることが必要です。

参考資料

注1) 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針|IBD研究班 - PDF

注2) 潰瘍性大腸炎(指定難病97)- 難病情報センター

注3) 小腸カプセル内視鏡~検査の流れやスケジュール、適用疾患

注4) 潰瘍性大腸炎の食事について - 難病教室 – 兵庫県立尼崎総合医療センター

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME