虚血性腸炎とは?原因・症状・検査・治療を解説
体の不調は、ある日突然現れることもあれば、少しずつ変化していくこともあります。普段と違う状態が続くと、不安を感じる方も少なくありません。大切なのは、無理をせず体からの変化に気づき、必要に応じて適切な対応につなげることです。
体の中では、さまざまな器官が血液から酸素や栄養を受け取りながら働いています。その流れが一時的に滞ることで、思わぬ不調につながることもあります。ここでは、虚血性腸炎の原因や症状、検査、治療、再発予防について詳しく解説します。
虚血性腸炎とは?
虚血性腸炎とは、大腸に流れ込む血液が一時的に不足し、腸の粘膜が傷つくことで起こる病気です。「虚血」とは、組織に十分な血液が届かなくなる状態を指します。血流が低下すると酸素や栄養が行き渡りにくくなり、粘膜に炎症や出血が生じます。
左側の大腸に起こることが多いとされています。多くは一時的な血流低下によるもので、血流が戻るにつれて症状も改善していきます。ただし、炎症が治った後に腸が狭くなる狭窄型や血流障害が強く腸管が壊死する壊疽型に進行する場合もあります。
虚血性腸炎の主な症状
虚血性腸炎では、急な腹痛をきっかけに、下痢や血便が続いて現れるケースがよくみられます。痛みは左下腹部に出ることが多く、トイレに行ったときに便に血が混じっていることに気づく方もいます。人によっては、吐き気やお腹の張り、微熱などを伴うこともあります。
一方で、血便があるからといって、必ず虚血性腸炎とは限りません。感染性腸炎や潰瘍性大腸炎、大腸憩室からの出血、大腸がん、痔などでも血便はみられます。出血の色や量だけでは判断が難しいため、突然の腹痛や血便がみられたときは、医療機関で原因を調べることが重要です。
虚血性腸炎の原因
虚血性腸炎の主な原因は、大腸への血流が一時的に低下することです。高血圧や糖尿病、脂質異常症などによって動脈硬化が進むと、腸への血流が低下しやすくなることがあります。また、脱水によって体内を循環する血液量が減ることも、腸の血流低下につながる要因です。
さらに、便秘も発症に関わる要因の1つです。硬い便が腸内にたまると腸管内の圧力が高まり、腸壁にある細かな血管が圧迫されることがあります。排便時に強くいきむことも、腸に負担をかける原因になります。このように虚血性腸炎は血管の状態だけではなく、便秘など腸側の要因が重なって起こることがあります。
虚血性腸炎になりやすい人
虚血性腸炎は、動脈硬化が進みやすい高齢者に多くみられます。高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がある方や、心臓や血管の病気がある方では、発症リスクが高くなることがあります。
ただし、高齢者だけに起こる病気ではありません。慢性的な便秘がある方や、便を出す際に強くいきむ習慣がある方では、若い年代でも発症する可能性があります。年齢にかかわらず、急な腹痛と血便がみられた場合には注意が必要です。
虚血性腸炎の検査と診断
診察では、腹痛が始まった時期や痛みの場所、血便の状態、下痢や便秘の有無などを確認します。あわせて、高血圧や糖尿病などの基礎疾患、服用している薬についても確認します。
必要に応じて血液検査や腹部CT検査を行い、炎症の程度や脱水の有無、腸壁の変化などを調べます。さらに大腸カメラで粘膜を直接観察することもあります。大腸カメラでは、むくみや発赤、出血、潰瘍などを確認できるほか、潰瘍性大腸炎や大腸がんなど、似た症状を起こす病気との鑑別にも役立ちます。
虚血性腸炎の治療
軽症から中等症の場合は、腸を休ませながら血流の回復を待つ保存的治療が中心です。症状が強い時期には一時的に食事を控え、必要に応じて点滴で水分や電解質を補給します。症状が落ち着いてきたら、消化しやすい食事から少しずつ再開します。
多くの場合は保存的治療によって改善しますが、血流障害が強く腸管が壊死する壊疽型では手術が必要になることがあります。また、炎症後に腸管が狭くなり、便の通過が悪くなる狭窄型でも、状態によって外科的治療が検討されます。
虚血性腸炎は再発する?
虚血性腸炎は、一度改善した後に再発することがあります。そのため、発症につながったと考えられる要因を確認し、できる範囲で改善していくことが大切です。高血圧や糖尿病、脂質異常症などがある場合には、継続して治療を受けます。
また、便秘が発症に関係している場合には、日頃から便通を整えることも重要です。ただし、自己判断で便秘薬を多く使用すると、下痢や脱水につながる場合があります。便秘が長く続いている場合には、医療機関で相談しながら適切に管理することが必要です。
虚血性腸炎を予防するために
虚血性腸炎を完全に防ぐことは難しいものの、発症につながる要因を減らすことはできます。生活習慣病がある場合は適切に管理し、脱水を防ぐために水分補給を意識することが大切です。ただし、水分制限が必要な病気がある場合は、主治医の指示に従います。
便秘を繰り返している場合には、食事や運動、生活リズムを見直し、無理なく排便できる状態を整えることも大切です。突然の強い腹痛や血便、発熱、ふらつきなどがみられる場合には、虚血性腸炎以外の病気も考えられるため、早めに医療機関を受診することが重要です。
