過敏性腸症候群(I B S)
過敏性腸症候群
IRRITABLE BOWEL SYNDROME:IBS
このような症状をお持ちではありませんか?
- 慢性的に便秘・下痢を繰り返す
- 1日に何度も軟便・下痢をする
- 1日に何度もおなかが痛くなって便が出そうな感じはあるがなかなか便がうまく出ない。
- 兎糞状のコロコロの硬い便で出しにくい
- 残便感がある
- 腹痛・腹部の不快感が頻繁に起こる
- ガスが溜まっている感じがする。おなかが張って痛い
- 緊張すると急におなかが痛くなる。大事な場面でおなかを下してしまう
- 冷たいものを食べるとおなかがぐるぐる鳴って痛い
- 授業中や仕事中、移動中などのすぐにトイレに行けない状況だとおなかが痛くなる
- 朝食後や通勤・通学の途中でおなかの調子が悪くなる。学校もしくは職場で頻繁にトイレ行く。帰宅時・帰宅後には落ち着いている
- 週末はおなかの状態が落ち着いている
- 排便によって症状改善・軽快し、ストレスや緊張などで悪化することが多い
- 頑張って腸活をしているのに改善しない
このような症状でお困りではないでしょうか?
慢性的に続いていれば、過敏性腸症候群による症状かもしれません。
過敏性腸症候群はお腹の痛み、便秘や下痢、不安などの症状により、日常生活に支障をきたすことが少なくありません。お困りの方はお気軽にご相談ください。
「過敏性腸症候群(IBS)」ってどんな病気?
過敏性腸症候群とは,腹痛・腹部不快感などの「内臓知覚過敏」と「便通異常(下痢・便秘・あるいは両者混在)」が持続する状態です。
過敏性腸症候群は、『器質的異常(腫瘍や炎症など)』はなく、腸の蠕動が上手く機能しないなどの『機能的な異常』を来す病気です。
10~40 代と若い方に多く、最近は中高年層にも多く見られます。ストレスなどに腸が過敏に反応して便通異常をきたします。過敏性腸症候群は神経質な人、真面目な性格の人にほど発症しやすいことがわかっていますが、ストレスの多いと言われている現代社会ではだれもがなり得る病気の一つといえます。さらに最近の研究から「腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れ」が誘因であることがわかってきました。細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかったその回復後に過敏性腸症候群になりやすいことも知られています。
脳腸相関(brain-gut interactions )あるいは腸脳相関(gut brain connections)という言葉があるのですがご存知でしょうか。生物にとって重要な器官である「脳」と「腸」がお互いに密接に影響を及ぼしあうことを示す言葉です。ストレスを受けると「脳」からの信号が「腸」に伝わり、腸の運動に影響を及ぼします。ストレス状態や緊張により腸の収縮運動が過剰になり、また、痛みを感じやすい知覚過敏状態になります。腹痛や下痢が生じるのはそのためです。これが過敏性腸症候群(IBS)の病態です。
逆に、腸を整えることで精神が安定する、ということも期待が出来ます
症状
過敏性腸症候群(IBS)のおもな症状は、排便により改善する腹痛と便通異常(下痢・便秘など)です。慢性的に症状が持続します。
下痢型、便秘型、下痢と便秘を交互に繰り返す交替型、分類不能型に大きく分けられますが、なかでも、男性に多く見られるのは、下痢型、女性に多くみられるのが便秘型です。
下痢型
突然起こる下痢が特徴です。
- 授業中や仕事中、移動中などのすぐにトイレに行けない状況だとおなかが痛くなるため、余計に不安になり病状が悪化します。
- 緊張したり大事な場面に限ってお腹が痛くなり、下してしまう。
- 朝食後や通勤・通学の途中でおなかの調子が悪くなり、学校もしくは職場で頻繁にトイレ行く。帰宅時・帰宅後には落ち着いている。
便秘型
腸管がけいれんを起こし、便秘になります。
便は水分を失い兎糞のようにコロコロになり、排便が困難になります。
交代型
下痢と便秘を交互に繰り返します。
分類不能型
※ガス型
腸内でのガス発生により、お腹が痛い、おなかが張る、おならが出てしまわないか不安。
※国際的分類の中にはありませんが、臨床的によく経験し、実際に多いタイプなのでこちらに分類しました。
いずれのタイプも、排便すると症状が改善し、ストレス時、疲労時に症状が悪化します。
また女性では、月経前後に症状が悪化します。
このため社会生活に支障を来したり、学校生活が損なわれたりなど、生活の質が大きく低下することがあります。
診断
過敏性腸症候群(IBS)が疑われたとき
過敏性腸症候群のおもな症状は、排便により改善する腹痛と便通異常(下痢・便秘など)です。
しかし、大腸癌などの腫瘍性疾患や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患などの器質的な病気も、同じような症状を呈することがあります。
当院では、過敏性腸症候群を積極的に疑った場合でも、一度は器質的疾患を否定するために大腸カメラ検査の実施を推奨しています。
特に若い方においては、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患が隠れている可能性が高まりますので注意が必要です。
さらに注意したいこととして、過敏性腸症候群から潰瘍性大腸炎やクローン病となる確率も高いことが報告されています。
過敏性腸症候群と診断されても、腹部症状悪化時に発熱や関節痛を伴う場合や、便に血が混じる、体重減少などがある場合は潰瘍性大腸炎やクローン病を発症している可能性がありますので必ずご相談ください。
当院では内視鏡専門医による内視鏡検査を実施しており、つねに苦痛の少ないやさしい大腸カメラを心がけております。ご安心して検査をお受けください。
大腸カメラ検査施行時、過敏性腸症候群の患者さまは、痛みを訴えられる(痛みを感じやすい知覚過敏状態があります。)ことが多いとされています。可能なら鎮静剤の使用をお勧めします。
治療
ポイント
- 大腸カメラ検査をして他の器質的疾患(癌や炎症による腸疾患など)がないことを確かめ、「ひとまず安心」という状況を作ります。
そうすれば無用な心配はせずにゆったりした気持ちで治療を受けていただけます。 - 過敏性腸症候群がどのような病気なのかについて理解をする(病識をもつ)ことがとても大切になります。機能的な病気ですので、焦らずゆっくりいきましょう
- 日常生活ケア、食事療法、薬物療法などがあります。一緒に考え、取り組みましょう。
症状を抑えることも大事ですが、症状を誘発しうる原因がないかどうかを考えることや、その解決を図ることがとても重要になります。
日常生活ケア
ストレスをためない
お酒・タバコに頼らない、自分に合ったリラクセーション法を
睡眠・休養を十分とる
適度な運動をする
排便習慣を身につける
食事療法
下痢型
刺激性のある食品(香辛料のよく効いた物など)をさける
冷たいものを一気に飲まない
高脂肪食を控える
アルコールを控える
便秘型
水溶性食物繊維(ネバネバ系の繊維⁑里芋、山芋、オクラ、もずく、ワカメ、ナメコなどなど)を意識的に摂取する。
水溶性食物繊維についてはこちらをご参照ください。(今後公開予定)
ガス型
「低FODMAP(フォドマップ)食」を意識してみる。
過敏性腸症候群の特にガス型において、注目されている食事療法があります。
「低FODMAP(フォドマップ)という食事療法です。
「低FODMAP(フォドマップ)食」とは
2014年にオーストラリアのMonash大学を中心に行われた試験で証明され、論文にもなったもので、世界中で大きな話題となりました。
その後、多くの研究で過敏性腸症候群患者における低FODMAP食の有効性が証明されています。
それでは、「FODMAP」とは何かを示します。
- F(Fermentable):発酵性の以下の4つの糖質
- O(Oligosaccharides):オリゴ糖(玉ねぎなど)
- D(Disaccharides):二糖類(ヨーグルト、牛乳など)
- M (Monosaccharides):単糖類(蜂蜜、果物など)
- A(and)
- P (Polyols):ポリオール(人工甘味料キシリトールなど)
を意味します。
これらはいわゆる『腸活』で推進されるものが多く含まれています。
私も腸の調子が悪い方には食物繊維やオリゴ糖などの善玉菌のエサとなる食事(『腸活』)を勧めることが多く、実際にそれで便通異常が改善される方はとても多くおられます。
しかし過敏性腸症候群においては、FODMAP食は発酵性が高いため、腹部症状を誘発してしまう可能性があるのです。
過敏性腸症候群においては、FODMAPは消化・吸収されにくく、小腸内でそれを薄めようと血管内から小腸内へ水分が送りこまれます。その結果、下痢やお腹の張りを引き起こします。
吸収されないまま大腸に到達したFODMAPは腸内細菌のエサとなり発酵が進みます。
発酵自体は悪くなく、むしろあって然るべきなのですが、過敏性腸症候群においては発酵が過剰になってしまうことがあるのです。
過敏性腸症候群の人の腸内細菌は、無症状の人の腸内細菌と種類が異なることが分かっていますが、それも過剰な発酵に関わっているようです。
研究結果では、一定期間FODMAP食を全て排除した後に少しずつFODMAPを増やしていき、食べてもいいFODMAP と避けた方が良いものを判別していく方法を取っていました。FODMAPの含まれる食べ物はいくつもありますが、実際全てを避けるのは難しそうですし、気が滅入りそうになります。こだわりすぎてストレスを溜めてしまい、かえって病状が悪化する可能性もあります。そこでお勧めするのは、おなかの調子が悪くなったときの食事内容をメモに残すことです。メモに残さないまでも振り返りをするという事です。
おなかの調子が悪い時とよいときの食事内容を振り返りながらご自身にあった食事を探していくのがよいでしょう。
あらかじめFODMAPがどういうものに多いのか少ないのかを把握しておくと良いです。食品の詳細については患者さま向け資料として当院で配布しておりますのでお気軽にお声がけください。
※下痢型だけではなく便秘型の過敏性腸症候群の方にも良いという結果がでています。
しかし、いわゆる便秘型の方にとってはむしろ高FODMAP 食の中に積極的に摂取された方がよい食材も多数あり、高FODMAPの方が良い可能があります。いわゆる『腸活』を積極的に行うと良いです。便秘の方は低FODMAP食と高FODMAP 食のどちらがいいのかは人によって異なります。食べたものとそのときの調子を見ながら判断する必要があります。
薬物療法
西洋薬・漢方薬等があります。
過敏性腸症候群(IBS)なら飯島クリニックへ
下痢が続く、コロコロの便しかでない、下痢・便秘を繰り返す、
過敏性腸症候群の症状に苦しんでいる、困ってはいるがこんなことで受診していいのか?と医療機関受診を躊躇っている、などなど。
お困りの方はいつでもお気軽にご相談ください。